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“話し方”で想いを伝えよう

今回のお相手

1976 東京生まれ 1999 株式会社堀口硝子へ入社 二代目秀石(須田富雄、江東区無形文化財)に師事 2008 三代秀石を継承 株式会社堀口硝子から独立し、堀口切子を創業 2012 堀口切子を株式会社堀口切子に改組 日本伝統工芸士(江戸切子)に認定 2015 江戸川区松江に工場移転 White Base 日本伝統工芸士 (江戸切子) 江戸切子協同組合 理事 日本ガラス工芸学会 会員

作品一覧

切子グラス

グラス(タイトル不明)

グラス(しずく)

そば猪口(よろけ縞)

グラス(縦糸)

切子黒

切子(青緑赤)


留学先で痛感したコミュニケーションの重要性



――活発になった野村さんはその後……。



堀口徹氏:
言葉、特に英語がすごく好きだったので、英語科のある高校に入りました。職業を意識し始めた頃には、語学を生かした仕事をしたいと思っていました。大学時代にはシアトルに留学するのですが、言葉ではすごく苦労をしました。留学先では、危険な目にも何回か遭いました。ある日、通学バスの路線を間違えてしまったのですが、親切な運転手さんが送ってくれるとことになりました。ほっとしたのも束の間、おろされた場所に地元のおばさん二人が走ってきて、「女の子一人でこの通りに入ったら、絶対に駄目!」と、ものすごい剣幕で怒られたのです。実は、ホームステイ先とは全然違う、危険な場所で降ろされていたことを知りました。その後は、ホストファミリーが私のために、もう一度一緒に通学路をチェックしてくれたり、そういう人たちの支えがあって、なんとかやっていくことができました。そういった経験から、「海外に行って、日本から来る学生さんをサポートするような仕事がしたい」と思うようになったのです。

――そこからアナウンサーへと進まれたのは。



堀口徹氏:
留学中に「しゃべっていても面白くない」と言われたことがありました(笑)。なぜかと聞いてみたら、「反論しないから。自分がこうだと思ったことは、イエスかノーかを、はっきりとロジカルに伝えるようにしないと、会話が面白くない」と。外国人の中で自己主張ができないことが、コンプレックスでした。色々と悩んだ結果、「その原因は英語ではなく、話し方なのではないか」という結論に達したのです。



「話し方を根本的になおさないと、私は海外で仕事はできない」ということで、まず話し方教室を探すことから始めました。NHKの初期のアナウンサーであったI先生という「アナウンサーが人生の全てです」というような、すごく厳しい先生に出会いました。最初は「なんで発声をやらなくてはいけないのか」などと思っていましたが、次第に「発声は全てに通じる」ということがわかってきて、面白くなっていきました。そうやっているうちに、アナウンサー試験にも受かることができたのです。どの放送局を受けに行っても、I先生のところで学ばれたのですね。喋り方ですぐにわかりますよ」と言われるくらい、個性の強い先生でした。

アナウンサーになってから教えてもらったことや、自分の経験により培ってきたものを、一般の方にも伝えたいという思いで始めたのが、2005年でした。10年前の日本には、あがり症の人のための話し方教室、アナウンサーになりたい人のためのプロ養成所しかなくて、その中間の人たちのための場所はありませんでした。

――そういった場所を必要としている人は、多いのかもしれませんね。



堀口徹氏:
子どもの時に話し方を習う機会がなく、苦労する人も多いのかもしれません。それに日本には、“阿吽(あうん)の呼吸”という独特のものもありますが、その感覚が時には「はっきり物を言い、相手に的確に伝える」ということの妨げにもなります。「これからの社会では必要とされる場所だ」と、アナウンサーの仲間二人と、会社の立ち上げに踏みきりました。でも、最初の頃は、パンフレットを持って会社訪問に行っても、まず「なんで話し方なの?」という説明をするところから始めないといけませんでした。

“話し方”で、本当に人生が変わるの??



――周りがまだ、話し方の重要性を感じていなかったのでしょうか。



堀口徹氏:
当時は、外資系の会社のトップのスピーチなどに触れる機会も少なく、スピーチやプレゼンの重要性を感じて下さる企業も、今ほどではありませんでした。「アナウンサーになるわけでもないのに、なんで発音をやるの?」と言われたこともあります。お給料でためた貯金が、どんどんなくなっていって、「缶ジュースを買うお金もないし、別の仕事をしようかな」と母に相談したことを、今でも覚えています。

その時母は、「じゃあお白湯を飲めばいいじゃない。もやしが一番安いから、もやしを炒めて食べたら?」と……(笑)。母の励まし(?)のおかげもあり、地道に続けていくうちに「異業種交流などの場でスピーチをさせられるから、一回、やってみようかな」と言ってくださる方も出てきました。最初に仕事を受けてくれた社長さんとは、今でもお付き合いがあります。その方は「人生が変わったと思う。発声なんかやって、どうするんだって思っていたけど、一生懸命やることによって、全てがうまくいきはじめた」とおっしゃいました。

――実際にやってみて、手ごたえがあったと。



堀口徹氏:
私は「だから言ったじゃないですか」と(笑)。「新人から始めて、これから管理職になる候補生にもやってほしい」ということで、その対象はどんどん広がっていくことになりました。私たちも最初は、スピーチだけを教えていましたが、営業の方には営業トーク、新人の方には印象アップできるようなマナーも含めて、そして管理職は、リーダーシップを取れるようなモチベーションの研修といったように、色々とコンテンツを増やしながら、ビジネスに合うようにアレンジして、自分たちで作り上げてきました。

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