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先人に近づき 自分の色で挑戦する

今回のお相手

江戸末期から受け継がれてきた伝統技に、新たなセンスを融合させた作品を製作する東京銀器伝統工芸士、銀師(しろがねし)の上川宗達さん。 彫金技術を駆使した模様に金を入れることで、華やかな桜を表現した、銀製 打込象嵌花器「夜桜」は、第7回全日本金銀創作展で受賞するなど、内外から高い評価を得ています。“音”や“感覚”で作り上げられる銀器の世界。その魅力と想いを伺ってきました。銀製 打込象嵌花器「夜桜」は、第7回全日本金銀創作展で受賞するなど、内外から高い評価を得ています。“音”や“感覚”で作り上げられる銀器の世界。その魅力と想いを伺ってきました。

作品一覧

グラス

壺

ヤカン


持ち主の“生きた証し”が刻まれる銀器の魅力



上川宗達B氏:
ある時「お世話になった人の還暦祝いに、ビールコップをプレゼントしたい」とお客様から依頼を受けました。なぜ銀器なのか伺ったところ「黒くなるから。その時に、私たちのことを思い出してほしい」と。“いぶし銀”という言葉があるように、銀は使っているうちに味わいが出てきます。もちろん磨いて元の輝きを取り戻すことも出来ますが、あえて使われた歴史をそのままにしておくことで “生きた証し”が刻まれます。銀器と一緒に歩んでいく。それが魅力のひとつだと思います。



また実際に使ってみて、その味や香りの違いを楽しめるのも魅力です。味香り戦略研究所では、「ワインやシャンパンなどは、銀のイオンによって成分が反応して味が変わる」という結果が出ています。また銀は金属の中で、一番冷媒効果があります。ガラスを1とすると、銅が380倍ぐらい、銀の場合は420倍も冷媒効果があるのです。また部分的に薄くすることによって、口当たりや飲みやすさにも変化を加えたりと、銀器ならではの特徴をいかした楽しみ方が出来きます。

手間を惜しまず使い手に尽くす 



上川宗達B氏:
私は「期限の中で、手間を惜しまず使い手に尽くす」ことを一番に、銀器を作っています。何かの企画展に出品するような“作品”の場合は、ある程度時間をかけられますが、本業であるものづくりは、限られた時間の中でお客様に届けることが出来て初めて成立します。日々技術を高めながら、よりお客様に喜んでもらえる作品づくりを心がけています。

また、作品には精神状態が如実に表れてきますので、常に平静を保たなくてはいけません。興奮していれば、強く叩きすぎてしまうし、落ち込んでいれば、弱くなってしまう。厚みを均等にするために、一周、同じようにたたかないといけません。最初の数回で、「こういう風にたたく」というイメージを決めて、あとは無心で取り組みます。

長く使ってほしいので、“壊れにくさ”や“直しやすさ”も考えながら作っています。全国から修理依頼を頂きますが、へこんだ箇所は厚みを残すなどして、品物の機能面を損なわないように注意を払います。東日本大震災の時も、仏壇の花入れなどの修理依頼がありました。底が狭いものは倒れやすいので、仏壇の中の限られたスペースを活用して、倒れにくくしてお返しするなど、工夫を続けています。

先人に近づき 自分の色で挑戦する



上川宗達B氏:
私たち伝統工芸に携わる職人にとって、昔に作られた作品こそが教科書です。けれども、その見方は自分の成長・変化に伴い変わっていきます。「同じだ」と思ってしまうと、それ以上のものは作ることができません。「どこが違うのか」を見ながら、工夫を重ねていかなければなりません。そうして先人に「近づいていく」。その上で、自分の色を出しながら良い作品を作っていく。そしてそれを次世代へと伝える、その繰り返しだと思います。

その繰り返しの中で、新たに出来ることを考え挑戦したいですね。今は、陶器や漆器を見ても、「銀で作ったら、どういう風になるのか」などと考えるようになりました。伝統を継承しながらも、さらに可能性を広げて、銀器の魅力を多くの人に感じてほしい。そして、その素晴らしさを国内だけではなく、世界の人にも感じてもらいたいと思っています。


(取材・文 沖中幸太郎)

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